[2017.9.23] -[議会活動]
1.高齢者保健福祉計画の策定と施策推進の課題について
(1)「共生型サービス」の創設など、改悪介護保険関連法に対する認識と計画との関係について
本年5月26日、参議院本会議において、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が、民進党、共産党、希望の会等を除く与野党の賛成多数で可決・成立しました。
介護保険法を含む31本の法律を一本に束ねた一括法として提案され、具体的な内容の多くを政令に委ねるものでした。
にもかかわらず、政府与党は、衆院厚生労働委員会では与野党の合意を踏みにじり、わずか22時間で一方的に審議を打ち切って採決を強行し、参院厚生労働委員会では、首相質疑すら実施せず、さらに短い16時間の審議で採決を行いました。
十分な審議を尽くさず、詳細を明らかにしないまま採決を強行した政府与党の責任は重大だと言わざるを得ません。
今回の見直しは、「社会保障・税一体改革」の徹底のために打ち出された「経済・財政一体改革」にもとづいて具体化されたものですが、2011年、2014年の改正の延長であるとともに、「自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化」、「共生型サービスの創設」など、新たな見直しも盛り込まれています。
具体的には「給付と負担の見直し」の名のもとに利用料の3割化、「医療・介護一体改革」の名のもとに療養病床削減のために「介護医療院」の創設や「自立支援・重度化防止」を口実に公的サービスから「卒業」を促す「自立支援介護」の導入、「福祉のあり方の見直し」の名のもとに高齢者と障害者・児のサービスを複合化させた「共生型サービス」の創設で「地域包括ケアの深化・推進」です。
その詳細については触れませんが、これらの一連の「改正」の土台となっているのは、政府が昨年7月に打ち出した「『我が事・丸ごと』共生社会」構想です。
高齢者や障害者のケアや子育て、生活困窮、就労困難といった地域の様々な課題を住民一人が「我が事」として捉え、「丸ごと」対応すると説明されています。
本来公的責任において対応すべきものを住民の「互助・助け合い」に移し替えていく、地域に丸投げし押し付けていくもので、社会保障の大改悪と言わなければなりません。
こうした背景のもとに、第7期の「門真市高齢者保健福祉計画」及び「くすのき広域連合介護保険事業計画」が策定されようとしています。
高齢者保健福祉計画審議会の第1回目が、6月29日に開かれましたが、「策定の趣旨」では、先ほど紹介した一連の「改革」を念頭に置いて3月10日に開催された「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」にも言及し、「市民・地域・関係団体・行政が一体となって高齢者を支える仕組み(門真市地域包括ケアシステム)を構築していくため、中長期の視点を持った新たな計画を策定しなければなりません」と委員に説明しています。
国の制度の大改悪を無批判に高齢者保健福祉計画を策定するならば、高齢者施策の大幅後退とならざるを得ないと考えます。
今回の国の制度「改正」について、どのように認識しているのか、高齢者保健福祉計画との関係についても合わせて答弁を求めます。
(2)2015年第4回定例会の「2025年問題に対して門真市として万全の体制を構築することを求める決議」を受けた具体化の状況について
本市議会は、一昨年の第4回定例会、12月議会において、「2025年問題に対して門真市として万全の体制を構築することを求める決議」を全会一致で可決しました。
その内容は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢期に入っていく「2025年問題」まで、10年となった時点において、「国の示す『地域包括システム』の十全な構築にとどまらず、民生常任委員会において指摘された諸課題において課題についても検証を行い、超・超高齢化社会を見据えた本市の体制を早期且つ万全に構築する」ことを強く求めるものでした。
本決議から間もなく2年が経過しようとしています。
本市において、この決議にもとづいて、これまでどのような検証が行われてきたのか、その検証に基づく具体化などもあれば答弁を求めます。
(3)高齢者施策推進におけるくすのき広域連合での介護保険事業運営に対する具体の検証内容について
先ほどの決議に基づく検証にあたっては、特に高齢者施策の推進におけるくすのき広域連合での介護保険事業運営に対する具体的な検証も当然含まれています。
しかし、先の第2回定例会の一般質問においても「くすのき広域連合の組織体は時代に合わなくなってきている」との問題提起がありましたし、これまでも繰り返し議会で問題提起されていながら、「くすのき広域連合と十分連携をとりながら」の一点張りです。
今日まで、くすのき広域連合での介護保険事業の運営について、「地域の実情に沿った施策ができるのか」「組織体は時代に合っているのか」など、当然具体の検証作業が行われていると思いますが、検証作業を行っているのか否か、行っているということであれば、その内容について具体的に答弁を求めます。
(4)くすのき広域連合での介護保険事業運営から市独自の運営への転換について
私は、くすのき広域連合での介護保険事業の運営については、構成3市での調整に時間を費やし、その結果は調整できる範囲の内容にとどまり、結果として地域の実情に応じた施策展開ができず、まさに「百害あって一利なし」だと考えます。
認定審査会については広域事務組合等で実施するなどの工夫をしながら、くすのき広域連合での介護保険事業運営から市独自の運営へと転換することが求められると考えますが、答弁を求めます。
【答弁】
高齢者保健福祉計画の策定と施策推進の課題についてであります。
まず、介護保険関連法に対する認識などについてであります。
「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」いわゆる介護保険関連法につきましては、国会における議論を踏まえ成立したものであり、高齢者福祉のみならず、障がい者福祉、さらには生活困窮など地域のさまざまな課題への今後の方向が示されたものだと認識しており、本市におきましても、何らかの対応が必要となってくると考えております。
高齢者保健福祉計画につきましては、当然ながら高齢者福祉に関する今後の方向性を示すものでありますが、今般の法整備を踏まえ、障がい者福祉など他課題との関連も意識し策定していく必要があるものと考えております。
次に、2015年第4回定例会の「決議」を受けた具体化の状況についてであります。
市としましても、この決議を重く受け止めたところであり、29年4月の機構改革における福祉政策課への政策的機能の位置づけや、市内郵便局との見守り協定の締結、さらには、市民後見制度の導入に向けた検討などを進めてきたところであります。
くすのき広域連合につきましても、認知症初期集中支援チームの設置や認知症地域支援推進員の配置などは、本市域が他市域に先駆けて実施をしており、地域包括ケアシステムの構築に向け、鋭意取り組まれております。
今後におきましても、引き続き2025年に向けたさまざまな課題に対し、関係部局とも連携の上、今年度策定中の「第7期高齢者保健福祉計画」の検討にあたり開催する関係課長による同計画策定推進委員会を活用した情報共有・課題認識を深め、さらには外部の関係機関との連携などを行うこととしております。
次に、介護保険事業運営に対する具体の検証内容についてであります。
介護保険制度につきましては、平成12年の創設以来、18年4月には高齢者の尊厳を支えるケアの確立のための改正が、27年4月には地域包括ケアシステム構築の推進を目指す改正がなされ、地域の実情に応じた同システムの構築の推進が求められていることは十分に認識しております。このことから、現状、介護保険事業を広域連合で運営していることを踏まえつつ、多角的な検証を今後、慎重に進めてまいりたいと考えております。
また、くすのき広域連合においては、現在も地域の実情に応じて実施している介護予防や地域包括ケアシステムの構築を目指した地域づくり等について、今後の地域支援事業の展開を見据えた方策検討が進められており、構成市とともに検討を重ねていきたい旨の提案がなされたことから、今後、市も議論をしていきたいと考えております。
次に、介護保険事業運営の市独自の運営への転換についてでありますが、くすのき広域連合での介護保険事業運営における一定の課題を認識する中、先ほど申し上げたとおり、今後、議員ご提案の内容も含め、慎重に検証してまいりますのでご理解賜りますようお願いいたします。
【再質問】
①「『共生型サービス』の創設等、改悪介護保険関連法に対する認識と計画との関係について」は、問題点を指摘し、認識を質しているにも関わらず、問題点に対する認識については全く示されず、国言いなりの施策を進めようとの姿勢が浮き彫りとなりました。
そこで、先に指摘した問題①「給付と負担の見直し」の名のもとに利用料の3割化、②「医療・介護一体改革」の名のもとに療養病床削減のために「介護医療院」の創設や「自立支援・重度化防止」を口実に公的サービスから「卒業」を促す「自立支援介護」の導入、③「福祉のあり方の見直し」の名のもとに高齢者と障害者・児のサービスを複合化させた「共生型サービス」の創設で「地域包括ケアの深化・推進」についてそれぞれどのように認識しているのか、「何らかの対応が必要となってくる」とはどのような対応が必要となると考えているのか答弁を求めます。
② 2025年問題に関する決議を受けた具体的な対応については、「重く受け止めた」との答弁ですが、決議に基づいてどのような検証が行われてきたのか全く分かりません。そもそも決議に基づく検証が行われたのか、行われたとすればいつどのような会議においてなのか、そしてその内容について答弁を求めます。
2025年まであとあと7年余りです。千葉県木更津市は、2014年(平成26年)に市長を本部長とする「2025年問題対策本部」を設置し、全庁的に2025年問題にかかる課題の抽出、整理及びその対策等が検討されており、少なくない自治体で同様の組織が設置されています。
本市においても早期に対策本部等を設置すべきと考えますが、答弁を求めます。
【答弁】
まず、「2025年問題に関する決議」に基づく検証についてであります。
現在のところ、検証に特化した会議は行っておりませんが、29年4月の機構改革では、企画・財政部門は、多くの部署にわたる課題や、連携等について調整・後押しするという考えをベースに、全庁的に、各部の政策的な柱となる課を設置したところであります。
この中では、「決議」を受け、市の対応を具体化していくため、福祉政策課に政策機能を位置づけ、2025年問題に起因する様々な課題に対して、全庁的にしっかりと対応するための組織体制を整備したものであります。
次に、早期の対策本部等の設置についてであります。
現段階での対策本部等の設置についての考えはございませんが、2025年問題は、これまでに誰も経験したことのない課題・問題であり、高齢化等により年齢構成のバランスが崩れることによる課題やニーズの変化にどのように対応するのかということにつがなるものと認識しております。
このため、今後におきましては、第6次総合計画の策定の機会も捉えつつ、課題の抽出とその対応策について、全庁的な問題として、その認識を一つにし、共有しながら、取り組みを進めてまいりたいと考えております。
介護保険関連法に対する認識と対応についてであります。
今回の法改正におきまして、給付と負担の見直しにつきましては、現状、一定の所得者でサービス費用の2割負担者のうち特に所得の高い層には3割負担を求めるもので、介護保険制度の持続可能性を確保することを目的とし改正されたものであると認識しております。
また、医療と介護の連携では、新たな介護保険施設の創設等が、自立支援・重度化防止に向けた取り組みでは、保険者機能の強化等の取り組みの推進等が、地域共生社会の実現に向けた取り組みでは、障がい者や子ども等への支援も含めた包括的支援体制づくり等の取り組みが進められることとなったものであります。これらにより地域包括ケアシステムの深化・推進を図られるよう改正されたものであり、住み慣れた地域で安心し暮らし続けられることを目指すためのものであると認識しております。
なお、今後の対応につきましては、現時点で、国・府等からその具体の取り組みが示されていないことから、引き続き、情報収集に努め、必要に応じ庁内外と連携を図りながら進めてまいりたいと考えております。
2.地域生活支援拠点整備事業について
地域生活支援拠点の整備については、障害者の高齢化、重度化や「親亡き後」を見据え、障害児者の地域生活支援を推進する観点から、障害児者が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう様々な支援を切れ目なく提供できる仕組みを構築するため、地域支援のための拠点の整備が求められ、本市においても来年4月開設予定となっていましたが、国補助金が不採択となったことから、施設規模等の変更等について、今月になって理事者からの報告がありました。
施設整備については、ニーズが高い一方で、グループホームや短期入所等の社会資源は、北河内7市の中でも人口規模に比べ少ない状況であることから切実な問題であり、大変な苦労の中での変更であったと思います。
経過等について、先の民生常任委員会においても議論がありましたが、改めてこの問題について質問します。
(1)地域生活支援拠点整備事業の趣旨について
まず、地域生活支援拠点整備事業の趣旨、本市におけるニーズや整備の必要性などの認識につて答弁を求めます。
(2)整備に係る国庫補助不採択の経過と認識について
施設整備に対し申請していた国庫補助の額は、1億円余りとのことですが、約4億円だった建設工事費等の総額の4分の1です。
施設整備・運営を行おうとしていた社会福祉法人にとっては大打撃で、資金計画は大きく狂い、大変な苦労があったのではないかと考えますが、そもそもなぜ不採択となったのか、補助制度の枠組みやその額、不採択に至る経過など具体的に答弁を求めます。
(3)設計変更を余儀なくされた施設の内容等について
また、設計変更を余儀なくされた施設の概要についても合せて答弁を求めます。
(4)今後の対応について
施設整備や運営に対する考えについて、先日当該の社会福祉法人の事務局の方にお話を聞きました。
今回のことで、様々な対応が求められたとのことですが、その一つ一つをクリアしながら進めていることのことで、安心するとともに、今後の展開についてもイメージされているようで心強く感じました。
本市においてこの事業は、民設・民営ですすめられますが、事業者任せでは無く、本市が適切に支援していくことが求められていると考えます。
この点について、これまでどのように支援してきたのか、今後どのように支援していこうとしているのか答弁を求めるとともに、支援の一つとして5年間に限って5割に軽減されている借地料については、公益性の高い施設であることから、期間の延長や減免の拡充も含め検討すべきと考えますが、答弁を求めます。
【答弁】
地域生活支援拠点整備事業についてであります。
まず、地域生活支援拠点整備事業の趣旨についてであります。
地域生活支援拠点につきましては、国の指針に基づき、障がい者等の高齢化・重度化や「親亡き後」を見据え、障がい者やその家族が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、グループホーム、短期入所等の居住支援のための機能について、地域の実情に応じ、整備を進めることとされております。
本市におきましては、グループホーム等の社会資源が少ない状況やそれに伴い市民からの強い要望があることから、グループホーム、短期入所、相談支援等、居住支援のための機能を集約した多機能型の地域生活支援拠点を整備することとしており、民設民営方式による施設の建設及び事業運営を行うこととしております。
次に、整備に係る国庫補助金不採択の経過についてであります。
社会福祉施設等施設整備費の国庫補助事業につきましては、障がい福祉サービス事業に係る施設整備や大規模修繕などを行う社会福祉法人等に対し、補助基準額を上限に整備に要する経費の4分の3が補助される制度となっております。
事業者が大阪府に補助金申請を行うにあたりましては、本市としましても、意見書を提出するだけでなく、事業者に同行し、直接、府に対しまして、本市における拠点の必要性等について、丁寧な説明を行う等、事業者に対し、十分なサポートを行ってまいりましたが、本年1月の府のプレゼンテーション審査の結果、具体の理由は示されておりませんが、残念ながら不採択となったものでございます。
次に、施設の設計変更の内容等についてであります。
国庫補助金が不採択となったことを受け、事業者から申し出があった変更内容につきましては、施設の資金計画及び設計変更でございます。
資金計画では、当初、事業者の自己資金、国庫補助金の活用、福祉医療機構からの借り入れとされておりましたが、自己資金と福祉医療機構からの借り入れのみへ見直し、建設費用等を約3億8,900万円から約2億1,300万円に変更したいとのことでございました。
設計変更では、建物の構造を重量鉄骨の3階建てから軽量鉄骨の2階建てに、合計床面積を974.20㎡から760.73㎡に変更を行うものでございました。
この変更により、居室面積等が削減されることとなりますが、その大部分は当初の3階建て部分の廊下等であり、グループホームでは、フロア全体の見渡しが良くなり、死角が少なく、職員の目が行き届きやすくなるなどの改善もなされております。
次に、今後の対応についてであります。
賃貸料の減免期間の延長や減免の拡充につきましては、当該事業が公共性の高い事業であり、また、「重症心身障がい」や「強度行動障がい」の方の受け入れを可能とすることなどから、事業用地である市有地の賃貸料を5年間、5割を免除することとし、初期投資及び事業運営にあたっての一定の負担軽減を図っているところでございます。現時点で、さらなる減免期間の延長等は検討いたしておりませんが、当該拠点の整備・開設に向け、引き続き、支援を行ってまいりたいと考えておりますので、よろしく御理解賜りますようお願い申し上げます。
【再質問】
今回不採択となった国庫補助金「社会福祉施設等施設整備費」は、「障害者等の社会参加支援や地域生活支援をさらに推進するため、就労移行支援事業等を行う日中活動系事業所やグループホーム、障害者支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備を促進するとともに、スプリンクラー整備や防犯体制の強化を推進する。さらに、長期入院精神障碍者の地域移行を進める観点からも、グループホームの設置を一層促進する。」としながら、平成29年度の予算は国全体でわずかに70億円、大阪府ではわずか1億円余でした。
大阪府において行われたプレゼンテーションは、このわずかな補助金の交付先を決定するためのもので、18件の申請に対し決定されたのは、わずか2件というものです。
施設整備の必要性に対し、あまりにも予算が乏しいと言わざるを得ません。
このような状況について、どのように認識しているのか、今後国・府に積極的に要望していくべきと考えますが、答弁を求めます。
【答弁】
地域生活支援拠点整備事業についてであります。
社会福祉施設等施設整備費の国庫補助事業につきましては、障がい者等が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、入所施設からの地域移行を進めるための拠点等の整備に際し、貴重な財源であると考えており、今年度につきましても、国・府に対し、要望してきたところであります。
今後におきましても、必要かつ適切な財源が国において確保されるよう、国・府に対し、引き続き、要望してまいりたいと考えておりますので、よろしく御理解賜りますようお願い申し上げます。