[2016.6.17] -[議会活動]
1.授業アンケートについて
2012年に大阪府職員の評価・育成システムにおける授業アンケートが試行され、2013年から本格実施されていると聞いております。
授業アンケートとは、府内の公立小中学校に通う子どもたち、または保護者に授業についてのアンケートの協力を依頼しているものです。目的は、教員の授業力の向上と評価の参考にさせてもらうものだとしています。
アンケートの内容は、「お子さんは、授業を受けてその内容に興味や関心や意欲を持つようになっていますか」「お子さんは、授業の内容がわかるようになっていますか。」など5項目について問われており、回答については、「そう思う」、「だいたいそう思う」、「あまり思わない」、「思わない」などのいずれかにチェックするようになっているものです。
調べてみますと、大阪府が2012年に試行された後、各自治体に「実施に関する状況調査」をとっています。
その中では、各自治体でよく出されている意見が、「負担がかなり増すことが懸念される」「保護者と教職員の信頼関係が築きにくくなる不安がある」「見たこともない教員について、子どもからの聞き取りだけで評価することの抵抗の声があった」「先生の好き嫌いや教科の好き嫌いで判断していると思われるケースがあり、授業力の評価として疑問がある」というもので、また、「保護者の署名欄があるが、保護者が署名したか生徒が保護者の名前を勝手に書いたか、厳密には判断できない。保護者と子どもがよく話をしているか不明である」「記名することで、中学校では『子どもの成績に影響するのでは』の問い合わせが複数あった。など、各自治体とも、たくさんの問題点を指摘されていました。
本市の意見を見ますと、
・授業アンケート実施にあたり、費やす時間が膨大であった。
・授業アンケートを参考にし、教員にできるだけ正しい評価になるよう、日頃からの教員への声かけ、授業観察をこまめに行いたい。
・授業力の向上に役立つよう、教職員との信頼関係を大切にし、保護者に対しては制度の趣旨を理解していただき、積極的に学校教育・学校運営への協力をしてもらえるよう働きかけていきたい。
・膨大な時間とエネルギーを費やしてまでも実施すべきなのかどうか。学校現場(特に管理職)が抱える様々な負担や一部の職員との軋轢をどのように軽減していくのか、しっかりとした議論が今後も必要であろう。
・校長は保護者よりも多く、丁寧に授業観察している。子どもや保護者の評価も大事だが、校長の評価の方がより生かされるようにしてほしい。
・保護者によってはほとんど授業を参観していない方もおられる。それで評価をつけてもらうのはどうか(小学校)。
・学校独自のアンケートと重なる部分が多いので、本校としては不要。
など、このようにたくさんの問題を指摘しています。
本市のこのような報告に対し、府はどのように対応されたのか、授業アンケートが本格実施され4年目になりますが、どのような検証をおこなっているのか、実施状況についても合せてお答えください。
この授業アンケートは、教員の評価についての参考にするとのことですが、評価によって給与や処遇にどのような影響があるのか。あるとすれば、「高い」と評価された教員と「低い」と評価された教員にはどのような差があるのか。
また、授業アンケートの結果を教員の授業力向上についても参考にされるとのことですが、一人一人違うと思われますが、授業力向上に向けて誰がどのように関わり実施されているのですか、また、効果をどのように図っているのですか。
先ほども述べましたが、授業アンケートについては様々な問題が各自治体から出されていましたが、本市においては、その後も保護者や教員などからどのような意見が出されているのでしょうか、その内容についてもお答えください。
私は、授業アンケートについて、各自治体が答えているように、様々な問題があり、結果、教員の評価に保護者が利用されているだけのものだと考えざるを得ません。
以上のことから、どの子にもわかる授業にしていくには、このようなやり方は、百害あって一利なしであり、本市としても止めるよう府教委に対して求めるべきだと考えますが答弁を求めます。
どの子にも分かる授業の保障は、このような授業アンケートで校長や教師や保護者に負担や責任を負わせるやり方でなく、本市が実施している35人学級など少人数学級をすすめることや、子どもと向き合う時間を確保することや、教師の多忙化を解消することなど、教育環境を充実させていくことこそが重要であるということを述べ質問を終わります。
【答弁】
まず、本市の報告に対する府の対応についてであります。
議員ご指摘の、各校長の意見以外にも、教育委員会といたしましても、市町村や、各校に委(ゆだ)ねられていた「自由記述欄」の設定の有無を、府内で統一すること。児童の発達段階や、保護者による回答であることを考慮し、小学校での回答項目に「わからない」を追加することを、意見として、伝えております。
その結果、本格実施の際には、「自由記述欄」は設定しないことが、府内で統一され、小学校の回答項目に、「わからない」が追加されました。
また、校長意見の中にありました「費やす時間が膨大」という部分につきましても、事務作業軽減のため、「授業アンケート」を、作成・集計するための、プログラムソフトが提供されており、年々、ソフトの機能改善も行われております。
次に、「授業アンケート」の実施状況につきましては、各校より、「実施目的」と「協力依頼」についてのプリントを配付し、事前に周知を行うとともに、小学校におきましては、6月下旬から7月上旬に、保護者へ「アンケート用紙」を配付し、7月中旬から8月中旬にかけて、回収及び集計作業を行っております。中学校におきましても、概ね小学校と同様ですが、生徒が直接、回答すること、となっております。
「検証」につきましては、市独自の調査は、行っておりませんが、校長等から寄せられた意見につきましては、「府」との「意見交換会(かい)」等(とう)の場において、伝えております。
次に、「評価による給与等への影響」についてでありますが、「教職員の評価・育成システム」の評価区分は、
「SS」・「S」・「A」・「B」・「C」の5区分となっており、
毎年(まいねん)1月1日(いっぴ)の昇給の際、前年度の評価結果が反映されます。
55歳未満の職員におきましては、
「SS」・「S」・「A」は4号給昇給「B」は2号給昇給「C」は昇給なし。55歳以上の職員におきましては、「SS」・「S」・「A」は2号給昇給「B」は1号給昇給「C」は昇給なし、と定(さだ)められております。
また、勤勉手当の支給額の算定に対しましても、評価結果が反映されることとなっており、支給率として
「SS」が「2X+100分の72」
「S」が「X+100分の72」
「A」が「100分の72」
「B」が「100分の67」
「C」が「100分の62」と、定められております。
なお、Xの値は、評価分布により、大阪府教育委員会が、決定いたします。
しかしながら、以上のことにつきましては、あくまでも、校長が行った二次評価の給与反映であり、「授業アンケート」結果が、直接、給与に反映されることはございません。
次に、「授業力向上に向けての関わり」につきましては、「特段に低い」と判定された教員(きょういん)に対しましては、校長・教頭が授業観察を行い、課題が見られれば、改善方策について、教員(きょういん)と話し合い、丁寧な指導・助言を行うこととなっております。
また、「効果測定」につきましては、「授業改善シート」を作成することにより、改善状況(かいぜんじょうきょう)を把握しております。
次に、「保護者や、教員(きょういん)の意見」についてですが、「授業アンケート」導入当初、保護者の方から、 「専門家でない保護者が授業評価することは難しい」「先生の評価につながるのであれば、責任が重い」等(とう)の意見が、若干(じゃっかん)寄せられた学校もあった、と聞いており、近年におきましても、お一人の保護者の方から「教員評価に反対であり、学力向上につながらない」といった旨の手紙が、学校に寄せられていることは、聞き及んでおります。
また、職員団体から、課題についての意見を頂くこともあります。
今後とも、「授業アンケート」の趣旨を丁寧に説明することで、できる限り多くの保護者の方々に、回答への協力を求めてまいりたい、と考えております。
次に、「授業アンケート」は、「百害あって一利なし」であり、「市」としても、やめるよう「府」に対して求めるべきである、ということにつきましては、子どもたちは、学校生活の大半を授業で過ごすことから、学校生活が充実したものとなるために、「魅力的な授業」「わかる授業」が行われることが、大切であります。
そのためには、校長や教頭が、アンケート結果を踏まえながら、教職員に対して、適切な指導・助言を行い、育成にあたることも、有益であるとともに、「教員評価」における「客観性・公平性」を高めることにも寄与する、と考えております。
したがいまして、「市」として、「アンケート」をやめるよう「府」に対して求めることは、考えておりませんが、引き続き、教職員の「意欲・資質能力」の一層の向上と、学校の活性化に資する「授業アンケート」となるよう、「改善・充実」を求めてまいりたい、と考えておりますので、よろしく御理解賜りますよう、お願い申し上げます。