[2015.12.17] -[議会活動]
1.無料低額診療事業について
無料低額診療事業とは、社会福祉法第2条第3項第9号の規定にもとづいて、生活困難者が経済的な理由によって必要な医療を受ける機会を制限されることのないよう、無料または低額な料金によって診療を行う事業です。
厚生労働省は、「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」などの生活困難者が無料低額診療の対象と説明しています。健康保険証が無い方も、外国籍の方も利用が可能となっています。
実施医療機関は、患者の医療費を肩代わりしますが、固定資産税などの減免措置を受けることができます。
しかし、この事業を実施している施設は公共性が高い医療機関である場合が多く、もともと課税されないケースも多く、費用の持ち出しを覚悟で生活困窮者のために取り組みの努力をしている医療機関も少なくありません。
実施している施設は、平成27年4月1日現在、大阪府下では62の施設があり、門真市では、大阪キリスト教会社会館診療所とけいはん医療生協みどり診療所の2施設が本事業を実施しています。
窓口での一負担金免除の基準は各医療機関によって異なりますが、生活保護基準の120%未満であれば全額免除、120%以上140%以下であれば半額としているところが一般的なようです。また、この制度の適用は生活が改善するまでの一時的な措置であり、無料診療の場合は、健康保険加入または、生活保護開始までの原則1カ月、最大3か月、一部負担の全額免除と一部免除は半年を基準に運用しています。
厚生労働省によると平成24年度の集計で全国に558施設あり、患者数は年間700万人を超え、全国的にはここ数年で増加傾向にあるようですが、門真市における平成26年度の本事業の利用状況について答弁を求めます。
また、憲法25条が「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めているように、医療を受けることはすべての人に保障された権利です。国民皆保険制度が形骸化してきている中で、医療のセーフティネットとしてこの事業は、ますます重要になってくると考えますが、門真市の周知状況について答弁を求めます。
この無料低額診療事業には2種類あり、1つは社会福祉法人や日本赤十字社、済生会、旧民法34条に定める公益法人などが、法人税法の基準に基づいて実施するものと、もう1つは、社会福祉法第2条第3項第9号の規定にもとづいて、第二種社会福祉事業として実施するものです。社会福祉法第2条第3項第9号は「生計困難者のために、無料または低額な料金で診療を行う事業」と定めています。病院や診療所の設置主体にかかわらず、第二種社会福祉事業の届出を都道府県知事に行えば、この事業を実施することができます。
なお、届出の際には、生活保護を受けている患者と無料または10%以上の減免を受けた患者が全患者の1割以上などの基準が設けられていますが、厚生労働省は「都道府県の状況を勘案して判断する」としており、都道府県と事前に相談することが必要です。
さらに、医療機関には(1)生計困難者を対象とする診療費の減免方法を定めて、これを明示すること(2)医療上、生活上の相談に応ずるために医療ソーシャル・ワーカーを置くこと(3)生計困難者を対象として定期的に無料の健康相談、保健教育等を行うこと、などいくつかの条件が義務付けられています。先に述べたように年間患者数の増加や医療のセーフティネットとしての役割などこの事業の重要性は高まっています。
さらなる増設が必要と考えますが、市の見解を伺います。
この無料低額診療事業の大きな課題は、薬代です。院内薬局であれば、無低診事業の適用となりますが、院外薬局では適用外となります。現在では、医薬分業が進んで院外処方が増える一方、無料低額の薬局制度はないため、病院や診療所は自己負担が全額または一部免除になっても、薬代が発生し受診自体を諦めたり治療を中断する患者が出ています。
病気によっては、診療費全体の半分以上が薬代ということもあり、重い負担のために受診を控えたり、治療を中断するなどまさに、「金の切れ目が命の切れ目」になりかねません。
このような状況の中で、高知市は2011年4月から独自に、全国で初めて薬代を助成しています。高知市にお住まいの方は、無低診決定後14日以内に発行される処方箋に限って、本人申請により負担分を高知市が補助する制度が利用できるとしています。
また、旭川市においても同様の助成事業を実施しています。旭川市の場合は、無低診の適用期間において、初めて受診した日から3か月以内の処方費用を全部または一部助成されます。
さらに、青森市は2013年7月1日から薬代助成を始めました。また、助成期間を6カ月に設定しており、他の市に比べても期間が長いものになっています。
しかし、残念ながらこうした措置は全国的には広がっていません。
門真市においても「年金のみで生活している高齢者の方が多い中、この無低診事業の調剤薬局への適用が望まれています。ぜひ国への働きかけも含めて自治体等での軽減措置をお願いしたいと思います。」といった意見も聞かれます。
無低診事業の適用範囲を院外薬局にも広げ、薬代を助成する措置について市の見解を伺います。
【答弁】
無料低額診療事業についてであります。
本市における平成26年度の制度利用の状況でありますが、コミュニティソーシャルワーカー配置事業及び生活困窮者自立支援事業のモデル事業による相談支援を通じた診療依頼実績につきましては、4件ございました。
また、制度の周知についてでありますが、コミュニティソーシャルワーカー活動及び生活困窮者自立相談支援事業において、無料低額診療を行う医療機関は、地域の貴重な社会資源として連携を図っており、制度を必要とされる方に対しては適切に周知や利用支援を行っているところであります。
次に、無料低額診療事業の拡充につきましては、大阪府の関与は一定あるものの、実施主体は医療機関であり、市としての対応は困難であります。
また、適用範囲を院外調剤にも拡充することについてでありますが、社会福祉法に規定される制度の拡充については、国において対処すべき課題であると考えております。
なお、市独自の助成制度の創設につきましては、無料低額診療事業の本市における状況や、必要に応じ、既存の生活困窮者自立支援制度や生活保護制度の活用も可能であることから困難であります。
2. ネットリテラシー教育について
ネットリテラシーとは、情報ネットワークを正しく利用できる知識や能力のことであり、情報の発信や受信をしながら、必要な情報を取得する能力だけでなく、入手した情報が正しいものかどうかを的確に評価し、利用する一方インターネット上に存在する様々な危険や脅威に対処し、身を守る知識も含まれます。
インターネットに関連したデジタル機器の急速な普及は、大人だけでなく子ども達の間でも現在進行形の形で進んでいます。特にこの数年における子どもを取り巻くデジタル環境の変化は、あまりにも急速です。
内閣府が発表している平成27年版子ども・若者白書によると、携帯電話・スマホの利用状況は小学校4~6年生の46.1%、中学生の60.4%、高校生の95.2%が携帯電話・スマホを利用しています。
携帯電話・スマホの利用割合は、小学校4~6年生、中学生、高校生のいずれにおいても年々スマホの割合が上昇しており、また、年齢層が高いほど、スマホの利用割合が高くなっています。平成26年では高校生の94.3%がスマホを利用している状況です。
近年、中高生のネット依存や友人間のトラブル、果ては犯罪に巻き込まれるといったことも増加しています。
こうしたトラブルが起きると、犯罪の抑止として防犯カメラの設置などが取りざたされ、それはそれで大事なことだと思いますが、まずは犯罪に巻き込まれない、ネットをめぐるトラブルに巻き込まれないために子ども達のネットリテラシーを磨くことが必要ではないかと思います。
車や包丁は便利な道具ですが、使い方を間違えれば、凶器にもなります。SNSもそれと同じで、事件の多発により、危険性ばかりが喧伝されているように感じます。
この夏、寝屋川市で中学1年生の男女2人が遺体で発見されるという事件が起こりました。寝屋川市はこの事件を受けて、スマートフォンの使い方を話し合う「中学生サミット」を9月27日、緊急開催しました。その中で、「学校でもっとスマホの注意点を教えるべきだ」などの意見や要望が出されたようです。
門真市では、今年の11月17日、摂南大学の経営情報学科生が門真市立四宮小学校の6年生約120人に対し、モラルやルールを守った正しいインターネットの利用法について授業を行いましたが、本市の学校教育におけるネットリテラシーの方針やそれに基づく現状の取り組みについて答弁を求めます。
内閣府では、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにすることを目的として、平成21年より「青少年が安全に安心してインターネット利用できる環境の整備等に関する法律」が施行されており、この「青少年インターネット環境整備法」では、学校教育、社会教育及び家庭教育におけるインターネットの適切な利用に関する教育・啓発活動などを図ることなどが規定されています。
兵庫県猪名川町では、「INAGAWAスマホサミット2015」として、子どもから大人まで幅広い世代が参加して、スマホやネットとの付き合い方について考えるフォーラムが開催されました。
このフォーラムでは、地元の中高生、大学生等の若者で組織するSWING-BYという団体の高校生による小中学生への「スマホの公開模擬授業」をはじめ、その高校生自らが、小中学生向けにネットの上手な使い方をまとめた「スマホの教科書」の手交式や高校生と大人のパネルディスカッション等が行われ、地域が一体となって青少年のインターネット利用の問題についての認識を深めました。
神奈川県では、ネットに関するトラブルが増える中、学校の教職員はSNSについて知らず、児童・生徒の利用実態を把握できずにいました。こうした事態を打開するため県教育委員会の主催で、SNSに詳しい高校生が講師役を務め、教職員に理解を促そうという趣旨で「高校生によるSNS講座」が開かれました。
この取り組みにより、高校生から「先生方にSNSに興味を持ってほしい。興味をもって使ってもらえれば理解してもらえる。SNSについて知って、相談に乗ってほしい」と講座の趣旨を語り、「一緒にSNSの楽しい使い方について考えてほしい。高校生が思う楽しさと先生の考えは違うけれど、話し合っていきたい」としました。受講した先生方にも全体に好評だったようです。
この様に、インターネットやスマホの利用に関する取組について、各地域で様々な取組がなされていますが、今後のネットリテラシー教育についてどのような取組を進めていくのか答弁を求めます。
【答弁】
本市における情報教育につきましては、門真市ICT教育推進プランに基づいて進めており、ICTを活用した学力向上方策と、情報化社会に生きる子ども達の情報モラル育成を2つの柱として、情報機器環境の整備・充実や、教職員研修の実施に取組んでまいりました。
学校におきましては、市の推進プランに基づいて、ソフトウェアの基本的な操作技能の習得、インターネットから適切に情報を収集する力、表現したいことを効果的に発信する力の育成を図るとともに、インターネットの危険性や著作権の侵害等の情報化社会に存在するリスクを正しく理解するなど、子どもが情報化の有効性と危険性の両面から適切に情報リテラシーを身に付けることができるよう計画的に取組んでおります。
議員ご質問のネットリテラシー教育につきましては、情報関連企業から学校に講師を招聘し、専門家による最新課題に対応した授業を行うなど、工夫した取組を進めております。今年度は、大阪府警察本部のサイバー犯罪対策課と摂南大学のプロジェクトで学生たちが作成した教育コンテンツを活用し、学生が講師となって小学6年生の児童を対象にワークショップを実施した学校もあり、大学との連携についても有効な取組と認識しております。
今後につきましては、さらに大学や企業との連携を図り、このような取組について管理職及び教職員に周知し、多くの学校で実施できるよう努めると共に、これからの情報化社会に欠かすことのできない情報活用力を児童・生徒が適切に身につけるよう、ネットリテラシー教育を推進してまいります。