[2015.9.25] -[議会活動]
1.国保の広域化について
現在の国民健康保険は1961年にスタートした時から保険者は市町村と特別区だと国保法第3条1項に規定されてきました。しかし、今年5月27日「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立し、平成30年度から都道府県も保険者として位置づけ、市町村とともに国保を運営、つまり国保の広域化となることが決まりました。
厚生労働省は「都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業の確保等の国保運営の中心的な役割を担い、制度を安定化」「市町村は引き続き、保険料の賦課・徴収、資格管理・保険給付の決定、保健事業など、地域におけるきめ細かい事業を実施」と説明しています。
責任主体を都道府県とした財政運営は分賦金方式とされ、都道府県は事業費納付金(分賦金)を決定するとともに、標準保険料率を提示し、市町村は保険料率を決定、賦課徴収の上、事業費納付金を納付することになります。
7月9日第1回目の「事業運営検討ワーキング・グループ(W・G)」が開催され、8月11日、9月9日と現在までに3回の同W・Gが開催されています。
大阪府は法改定に先がけて、平成22年5月に府内市町村長との意見交換会において、府内統一保険料を目指すことが合意されました。しかしながら、保険料を保険税としている自治体もあり、条例改正に議会の承認が必要であったり、保険料の算定に資産割を導入している自治体もあり、統一保険料には多くの課題が山積している状態です。また、保健事業においても、「特定健康診査の項目上乗せや、特定保健指導の独自性が進んでいるため、市町村の独自性は認めるべき」「市民健診等との一体化されたこれまでの事業が後退することがないよう独自性は認めるべき」などの意見が出されています。
都道府県は今後、平成30年度に向けて「都道府県国民健康保険運営方針」の策定が義務付けられます。今後、国からガイドラインなども示されると思います。いま大阪府では「大阪府国保広域化等支援方針」が議論されている状況で、それを踏まえた「運営方針」の策定が予想されますが、大阪府の方針・状況など議論はどのようになっているのかお聞かせください。
次に納付金の考え方について質問いたします。
納付金とは、もともと分賦金と表現していましたが、法案上は納付金と変更されたもので、都道府県が1年間の医療給付費から公費などの収入額を引いた必要保険料額を、被保険者数・医療費実績・所得水準での按分により市町村に割り振り100%納付が義務付けられます。
W・Gの資料では市町村ごとの医療費水準や所得水準の反映が基本としながらも保険料一体化の場合は医療費水準を反映せずと書かれており、第2回W・Gでは国保事業費納付金についてのイメージと国保事業費納付金と保険料率のイメージが示されましたが、本市の納付金の考え方についてお聞かせください。
次に市民への影響について質問いたします。昨年夏、全国知事会は「協会けんぽ並みの保険料負担率まで引き下げるには(国庫負担)約1兆円が必要」と強く主張し注目されましたが、今年2月20日、国と地方の協議で3400億円の財政投入を国が約束しました。
3400億円の中身は①消費税増収分を活用して、低所得者対策をするための1700億円と②後期高齢者支援金総報酬制導入により浮く国庫負担2400億円のうち1700億円。この2種類を足した金額が3400億円です。
厚生労働省は3400億円投入で1人1万円の財政効果、つまり1人1万円保険料が引き下がるとしています。しかし、3400億円という金額は2013年度の全国の一般会計法定外繰入3900億円よりも少ない金額です。現行の一般会計法定外繰入を全額そのまま続けなければ、効果は出ないことになります。
さらに、②の1700億円に関しては、無条件で交付されるわけではありません。まず、新たに創設される財政安定化基金に全額国費で2000億円が積み上げられますが、その後については国・都道府県・市町村で1/3ずつ負担することになります。この基金は都道府県や市町村に交付または貸付をしますが、貸付であれば償還が必要となり、保険料引き上げの要因となります。
平成30年度からは1700億円の約半分を精神疾患の医療費、子どもの被保険者数、非自発的失業者の保険料軽減などの財政支援等に使うとされています。
さらに、残りの半分は「保険者努力支援制度」を創設して医療費適切化などに努力する保険者への支援として、後発医薬品(ジェネリック)の使用割合や全高齢者の1人当たり医療費、保険料収納率など客観的な指標に基づき財政支援するもので、この投入はまさに「医療費削減」「収納率向上」のためのものであり、被保険者の保険料引き下げに寄与するとはとても考えられません。
また、先に述べたように市町村は都道府県への納付金の100%納付が義務付けられます。
大阪府の平成25年度平均収納率は88.41%で約12%足りません。門真市では平成25年度の収納率は89.83%で約10%足りません。その不足分を補うには、いくつか考えられますが、新しい都道府県財政安定化基金から借りる。借りれば当然返済しなければならず、次年度保険料値上げの要因となります。また、納付金よりかなり割増の賦課総額にして保険料を計算し、9割の収納率でも納付金100%になるようにする。当然保険料は今よりかなり高くなります。いずれにしても保険料の値上げが危惧されます。
3400億円の影響、特に今年度からの1700億円の影響はどうか。100%納付の義務付けにより保険料の値上げが危惧されるが、どうか。また、財政共同安定化事業が今年度から1円化となっているが、「大阪府国保広域化等支援方針」において、平成30年度からの国保制度改革及びこれまでの経過等を踏まえ、同事業の今年度以降の拠出割合等について、引き続き被保険者数割1/2、医療費実績割1/4、所得割1/4とする。と書かれているが、同事業の1円化による影響はどうか。合わせてお伺いします。
次に減免制度について質問いたします。
今年5月22日開かれた門真市国民健康保険運営協議会の中で示されたモデルでは、現役40歳代夫婦と未成年の子供2人の4人世帯の国保料は基準総所得300万で59万9550円となり約2割の保険料となります。
7月25日付の毎日新聞で、厚生労働省は子どもの数が多い世帯の保険料を軽減する方針を固めたとの報道がされました。
門真市では(国保の)保険料の算定方法は、所得に応じて決まる「所得割り」世帯の人数が多いほど高くなる「被保険者均等割り」各世帯が等しく負担する「世帯別平等割り」により保険料を決めています。世帯の人数が多いほど保険料が高くなる仕組みで、子どもの多い世帯の負担が重くなっています。
政府は、市町村に対し、財政支援の一部を子どもの多い世帯の保険料引き下げに充てるよう促す。としています。
また、北九州市では2008年から多子減免制度をはじめています。減免基準は前年の世帯の所得が300万円以下の人で所得割が賦課され、18歳未満の子どもを2人以上扶養している場合とされ、減免内容は18歳未満の子ども2人目から1人につき最高33万円に所得割料率を乗じて得た額を所得割額から減免するというものです。
これ以上の保険料の値上げはいのち・くらしを脅かすものであり、より一層滞納も広がりかねません。
負担増を抑えるためにも、「払える保険料」としていくためにも北九州市で行っている多子減免のような対策を講じるべきと考えます。また、門真市が独自で実施してきた条例減免制度は広域化に伴いどのようになるのかお聞きします。
【答弁】
広域化のうち、府の方針、状況についてであります。
広域化に向けた大阪府での検討状況でありますが、本年5月に大阪府をはじめ、市長会等の各ブロック代表等で構成する「大阪府・市町村国民健康保険広域化調整会議」及びその下部組織として、「財政運営検討WG」、「事業運営検討WG」が設置され、本市は「調整会議」と「事業運営検討WG」の委員に選ばれております。
また、これら会議の所掌事務は「大阪府国民健康保険運営方針」に盛り込む内容、国保事業費納付金算定ルール及び標準保険料等に関する事項となっており、加えて「府内統一保険料率」を目指した仕組みの構築等についても、議論が進められているところであります。
次に、納付金の考え方についてであります。
納付金やそれに伴う保険料の算定につきましては、財政基盤の強化のための国費拡充をはじめ、新たに創設される保険者努力支援制度や過去の収納実績等が勘案されるものと考えられますが、具体の内容につきましては、現在、「広域化調整会議」において検討中であり、詳細につきましては、現時点では示されておりません。
次に、市民への影響についてであります。
国費拡充につきましては、本年度から全国で約1,700億円、大阪府では約150億円の国費が投入され、財政基盤の強化等が図られております。
この国費拡充につきましては、「国民健康保険基盤安定負担金 保険者支援分」で措置され、本市では約2億円の財政効果を見込んでおりますが、医療費の自然増や被保険者数の減等により、本年度の保険料率は、昨年度と比べ、ほぼ横ばいとなっております。なお、当該負担金につきましては、本年5月の法律改正により制度化されたことから、当初予算に計上いたしておりませんが、今後、本年度内の補正予算の計上を予定しております。
また、28年度以降につきましても、本年度と同等の財政効果は見込まれますが、保険料率につきましては、他の要素にも影響されることから現時点で見込むのは困難であります。
次に、本年度以降の保険財政共同安定化事業費につきましても、現時点で見込むことは困難でありますが、仮に拠出超過になった場合には、調整交付金により激変緩和措置が講じられることとなっております。
次に、減免制度についてであります。
現時点におきまして、新たな減免制度の拡充は考えておりませんが、これまで、被保険者の負担軽減につきましては、歳入の確保、歳出の縮減による保険料率の抑制をはじめ、市独自の制度により負担軽減を図ってきたところであります。
なお、現行の市独自の負担軽減措置につきましては、広域化の議論や市財政状況など不確定な部分もありますが、当面は、被保険者への影響やこれまでの経過などを踏まえ、継続できるよう努めてまいりたいと考えております。
2.子育て応援の施策について
6月議会においても少し触れましたが、門真市では15~64歳の生産年齢人口は減少しています。また、門真市人口ビジョンでは合計特殊出生率も減少傾向にあり、30歳代以降の母の出生率は北河内地域で最も低くなっています。しかしながら、15~24歳の母の出生率は北河内地域で最も高くなっています。
「門真市第5次総合計画中間見直しにかかる市民意識調査」では子育てをしやすいまちに向けて重要な取り組みについて、20~30歳代の女性では「子育て家庭への経済的支援の充実」が52.6%、男性では34.3%となっており、「子育てのための経済的支援」が必要なことが伺えます。
第2回門真市まち・ひと・しごと創生総合戦略審議会の中でも委員から「地域で支え合える環境づくり」というのがありますので、せっかく若い人における出産子育ての希望の実現というところで、ここと地域の資源を生かした子育て支援の環境づくりみたいな、少し点にしか見えないので、線というか、形にしていくような取り組みをしていかれた方が面白くなっていくのではないかと思います。との意見も出されています。
河内長野市では人口減少の著しい若年層の「転入・定住化」を促進し、人口の維持及び人口バランスの改善を図るため、子育て・若年夫婦を対象にマイホーム補助制度を創設しています。夫婦に小学生未満(就学前)の子どもがいる世帯か夫婦ともに40歳未満の夫婦のみの世帯に補助を行うものです。補助額は住宅ローン額によって異なり500万円以上1,500万円未満の場合補助額は10万円、1,500万円以上2,500万円未満の場合補助額は20万円、2,500万円以上の場合補助額は30万円といった内容です。また、宗像市でも宗像市内の民間賃貸住宅にこれから住む子育て世帯、新婚世帯の方に月額上限2万円、最長で36か月分(最高72万円)を補助するものです。
武蔵野市でもひとり親家庭住宅費助成制度として、20歳未満の児童がいるひとり親家庭の父・母・養育者が、民間の共同住宅等を借りて家賃を支払っている場合に、月額1万円を助成する制度があり、門真市においても「新婚世帯家賃補助」「子育て世代家賃補助」「1人親世帯家賃補助」などといった若い世代、子育て世代の家賃補助を実施すべきと考えるが市の見解を伺います。
【答弁】
家賃補助についてであります。
本市におきましても、合計特殊出生率の低下やそれに伴う児童人口の減少など少子化による人口減少への対応は喫緊の課題であると認識しており、その課題に対応するため、現在策定中の「門真市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本目標の一つに「若い世代における出産・子育ての希望の実現」を掲げるべく進めております。
このような中、新婚世帯や子育て世帯等への住宅購入費や家賃に対する補助につきましては、他市における実施例もあることから、若年世帯の誘致及び子育て世帯等への経済的支援の一方策として、本市といたしましても注視しているところでございます。
今後につきましては、子育てしやすいまちの実現に向け、他市における当該補助事業の事業効果等の状況を見極め、本市における財政状況を視野に入れた優先順位を踏まえた上で、子育て世帯の定住促進につながる方策について、総合的かつ効果的な施策を検討してまいりたいと考えておりますので、よろしくご理解賜りますようお願い申し上げます。