[2013.9.30] -[議会活動]
子育て支援について
2012年8月に社会保障と税の一体改革関連法として、消費税増税法や社会保障制度改革推進法などとともに、子ども・子育て関連法が参議院で成立しました。
これにともなって、子ども・子育て支援新制度がつくられようとしています。新制度の本格実施は、消費税が10%に引き上げられる予定の2015年4月とされています。これによって本市も大きく保育制度が変わることが予測されます。安心して子供を産み育てられる門真市にしていくために、新制度について問題はないのかしっかり考える必要があります。
そもそも新制度の根底は、保育を市場化し、産業として位置づけられないかと言うところから出発しています。そして、市町村の保育実施義務を無くし、保育所運営に財政的責任を負わなくてよい、子どもの保育から公の責任をなくすということが狙いですすめられ、保育関係者だけでなく、研究者や弁護士団体からも反対の声が上がり運動が広がったことで、現行保育制度の児童福祉法第24条1項の「市町村の保育実施責任」を残すことができました。
しかし、子どもの保育に格差を持ち込み、保育を市場に委ねるという制度の本質は変わっていません。「保育所さがし」は自己責任になってしまう直接契約の制度も基本的に原案通り導入されています。
実施主体である市町村には、国の方針を踏まえ、2014年10月から認定手続きなど、新制度の具体的作業に入るよう求めています。
国の日程に従えば、来年夏ごろまでに市町村では、新制度に関わる様々な基準や保育料などを条例で定め、住民に周知しなければなりません。
ところが、肝心の国の方針となる新制度の詳細は、内閣府に設置された「子ども子育て会議」でこれから検討するというものです。
そこで伺います。
1点目に、新制度では、①保育所、②家庭的保育事業等、③幼保連携型認定子ども園、④幼保連携型認定子ども園以外の認定子ども園、大別して4つの異なる認可・認定の基準が設定されるようです。
保育所や幼保連携型認定子ども園などを利用する子どもと、地域型保育事業や地方裁量型認定子ども園を利用する子どもとの間に、その保育や発達保障に、許容できない格差が生み出されることが危惧されます。同じ「保育を必要とする子ども」と認定されながら、利用する(できる)施設や事業者によって基準が異なり、その保育の水準に格差が生じるというのは平等原則(憲法14条)から大きく外れていると考えますが、市の見解をお聞かせください。
2点目に、現在の保育所申請は、申請をする前に認定を受けることはありませんが、新制度では、保護者が入所申請をする前に、保育の必要性・必要量の認定を受ける仕組みに変わります。保育が必要かどうかの「必要性」、受けられる保育時間は何時間なのかの「必要量」は、保護者の就労時間が基本となるため、これまでよりも保育時間が短くされてしまったり、障がいをもつ子供さんが認定されないなどの問題が起こりかねません。
認定は保護者の状況だけでなく、子どもの状況を基本とすべきと考えますが市の見解をお聞かせください。
3点目に、認定により、長時間区分の子どもと短時間区分の子どもに分けられ、両者が混在して保育所を利用することになり、年齢に応じた子どもの発達保障のための保育実践が困難になることが考えられますが、これについての市の考えをお聞かせください。
4点目に、私立保育所に支払われる委託費(施設型給付費)も区分に応じることになり、短時間区分の子どもが多い保育所では、減収になる等保育所運営が不安定化することが考えられますが、これについての市の考えをお聞かせください。
5点目に、保護者の側も保育必要量を超えた保育時間については、自己負担になる等、今より負担増になることはないのでしょうか。見解をお聞かせください。
6点目に、現行の児童福祉法第56条の2第1項では、「児童福祉施設について、その新設、修理、改善、拡張又は整備に要する費用の4分の3以内を補助することができる」と規定されていますが、改正児童福祉法では、この条文の「児童福祉施設」から、「保育所を除く」と改訂されています。これに伴い、保育所整備の補助金制度が廃止されることになります。
これでは、保育所増設による待機児童の解消が望めませんし、老朽化した保育所の建て替えや改築も難しくなるのではないでしょうか。これについて市の考えをお示しください。
7点目に、新制度では、自治体が株式会社の参入を拒められなくなります。今まで自治体が企業参入を進めてこなかったことは、「営利目的の株式会社と保育が両立するのか」という重要な問題があるからです。実際、2008年10月に、東京では、株式会社エムケイグループの運営していた保育所や学童保育所など29施設が経営破綻で突然廃園され、子どもたちが行き場を失う事態も生まれています。
株式会社が参入して、保育所運営の使途制限が完全に撤廃され、公金が株主への配当に回る問題が指摘されていますが、これについても市の考えをお聞かせください。
8点目に、「門真市子ども・子育て会議」についてです。
門真市においても、現在、「子ども子育て会議」を設置しすすめられています。
第1回目が9月2日におこなわれ、私も井上議員と一緒に傍聴させていただきました。
この会議は、学識経験者や医師、市民団体、保育関係者、保護者など19名の委員で構成されていました。今回の会議では「この会議は何のために設けられているのか、量的拡大ばかりで質の高い保育をどうしてつくっていくのかなどに触れられていないのはおかしい」等と問題提起をする委員や、「主役は子育てをしている家族(子どもは意見を言えないので)、母子家庭が多い本市では、一人親家庭の支援が大事。」また、保育所や幼稚園の園長先生からは、「ゆったりとした保育や丁寧な関わりが大事」などが出され、保護者からは、「病児保育があるというだけで安心できている、もっと拡充してほしい」「待機児童解消など、放課後児童クラブを充実させてほしい」など様々な貴重な意見が出されました。
しかし、この会議で、今年12月に実施を予定している、市民ニーズ調査のためのアンケート調査の中身について、議論することになっていましたが、議論をする時間が殆どありませんでした。これからの門真市の子育て支援の事業計画を策定する重要な会議ですから、十分に時間をかけて議論されなければならないと思いますが、わずか1年半で、本当に子どものためになる保育の準備が、この期間ででできると考えていますか。会議の目的、スケジュールがあればお示しいただき、この点について答弁をお願いします。
また、会議のメンバーは、現場の保育士や幼稚園教諭、学童保育関係者、保護者や元保護者等も追加すべきと考えますが、合わせて見解をお聞かせください。
最後に、これからも、これまでの保育水準を落とさず、すべての就学前の子どもの保育を保障していくための市の役割は重要となってきます。
保育を自己責任に解消させることなく、これからも自治体が責任をもって現行の公的保育制度を守っていくべきだと強く考えます。以上について、市の考えをお聞かせください。
【健康福祉部長の答弁】
子ども・子育て支援新制度における施設型給付の様々な類型につきましては、新たな制度化に伴い、保護者の幅広いニーズに対応できる多様な選択肢が整備されたものであります。
このことから、各給付及び事業の相違につきましては、保育水準の格差となるものではなく、それぞれの特色と捉え、子どもやその保護者の状況により、保護者が幅広く選択を行えるものであり、利用する子どもの間に格差は生じないものと考えております。
次に、保育認定につきましては、現行制度におきましても、保育所への入所要件は保護者の状況を基本としておりますことから、基本的には新制度への移行後も同様の考え方であるものと認識しております。
なお、現行制度の保育時間と保育の必要量との関係、子どもが障がいをもつ場合などを想定した優先利用の具体的な内容、保育認定区分の具体的な時間設定、保育区分ごとの施設への給付額、自己負担額も含めた費用面等につきましては、議員ご指摘の点も含め、今後、国の子ども・子育て会議におきまして、さらなる検討が加えられることとなっております。
いずれにいたしましても、現在、国の子ども・子育て会議において検討が加えられている事項につきましては、今後の議論の推移を注視してまいりますとともに、新制度についての情報や意見の交換の場である市町村ブロック別圏域会議などを活用し、保育内容の一貫性や施設運営の安定性を担保し、保護者負担が増大することのないよう、国に対して要望してまいりたいと考えております。
次に、保育所整備に係る補助金についてであります。
新制度におきましては、基本的に施設整備費用に相当する額を保育所への施設型給付費及び委託費の中に組み込むことによって、長期にわたり平準化した形で各施設整備を支援する仕組みとなります。
また、緊急に対応すべき施設整備につきましては、改正後の児童福祉法において、交付金による別途の支援について規定されており、国において、現行の安心こども基金からの施設整備補助の水準の維持を検討されることとなっております。
次に、新制度において参入する株式会社が公金を株主に配当することについてでありますが、現行制度でも法的規制はなされておらず、他事業会計との区分経理を求め、使途についての透明性を確保することとされており、制度上の問題はないものと考えております。
次に、門真市子ども・子育て会議についてでありますが、同会議は本市の附属機関として子ども・子育て支援施策に関する審議を行うために設置したもので、今年度及び来年度につきましては、平成27年度からの新制度の施行に向けた計画策定に係る審議を行うこととしております。
今後のスケジュールといたしましては、今年度においては2回開催し、ニーズの見込量に関する審議を行った上で、来年度予定しております4回程度の会議において、事業の実施方策や実施時期についての審議を行ってまいります。
審議期間につきましては、制度開始の時期が定まっておりますことから、円滑な会議運営に努め、限られた期間で審議を深めてまいりたいと考えております。
また、会議のメンバーにつきましては、現場の意見を聴取する意図から保護者、幼稚園及び保育所に携わる職員を委員としておりますので、これらの委員より、現状における課題も踏まえた意見を聴取できるものと考えております。
最後に、今後の市の役割についてでありますが、新制度の施行後におきましても、子どもの最善の利益を保障するとともに、保育の質の向上に努め、法制度の趣旨に沿った市としての責任を果たしてまいりたいと存じておりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
【再質問】
先ほどの私の質問の中で、「新制度では、保育所や幼保連携型認定子ども園などを利用する子どもと、地域型保育事業や地方裁量型認定子ども園を利用する子どもとの間に、その保育や発達保障に、許容できない格差が生み出されることが危惧される」ことについての市の考えをお聞きしましたが、答弁では、「利用する子どもの間に格差は生じない、多様な選択肢が整備された。格差ではなく、特色と捕らえ、幅広く選択を行えるもの」というものでした。
本当にそうでしょうか?そもそも、子ども・子育て支援新制度は、待機児童の多い0歳~2歳の子どもの受け皿として、小規模保育を増やして、待機児童を解消しようとしています。「小規模保育」は企業参入を容易にするために、大幅な規制緩和がされます。例えば小規模保育A型では、「マンションの一室や空き店舗でもよし」とされており、B型では「保育士資格が2分の1以上で認可する」となっています。施設や型によって基準がバラバラで、預ける施設によって大きな格差が出るんではないですか。このような格差は門真市では生まれないようにするんですね。もう一度、答弁をお願いします。
【再質問に対する答弁】
先ほどもご答弁申し上げましたとおり、小規模保育も含めた子ども・子育て支援新制度における様々な施設給付や事業につきましては、利用者の多様な選択を保障するものであると考えております。
このことから、各施設・事業の運営基準につきましては、国が定める基準を踏まえ、市町村が客観的な基準を定め、保育の質が確保されるよう努めてまいりますので、よろしくご理解賜りますようお願い申し上げます。